♠ １０月３１日とうとうダライラマが来日。１１月７日まで滞在。

以前よりお伝えして参りましたがとうとうダライラマが来日なさいました。
日本国内に於ける滞在日程は以下の記事の通りになっております。

ダライ・ラマ１４世が来日、出迎えに笑顔で合掌 : 国際 : YOMIURI ONLINE（読売新聞）
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20081031-OYT1T00297.htm?from=nwla

＞ダライ・ラマ法王日本代表部事務所によると、ダライ・ラマは今回、設立３５周年を迎えた
福岡県仏教連合会の招きで来日し、１１月４日に北九州市内で講演する。６日には、
東京・両国国技館でも講演し、翌７日に帰国する予定。

最近のチベット情勢をざっと見てみても各紙、中国とダライラマとの交渉で進展「期待薄」
と報じております。ダライラマは自治権拡大を訴えるも中国政府は「文化の自治の名を借りて
神権文化統治を復活させ、大チベットの独立をたくらんでいる」（31日北京にて日経より）
と批判、交渉は平行線を辿っています。

中国との対話進展に期待できず、とダライ・ラマ : 国際 : YOMIURI ONLINE（読売新聞）
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20081102-OYT1T00400.htm

＞僧侶への暴行なども行われ、「恐怖政治（への反感）が（チベット民衆の）憤りを
引き起こしている」と中国側を批判した。

NIKKEI NET（日経ネット）：中国、ダライ・ラマ特使と会談開始　五輪後初めて
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/asia/20081031D2M3102431.html

＞「文化の自治の名を借りて神権文化統治を復活させ、大チベットの独立を
たくらんでいる」と批判。ダライ・ラマ側との隔たりは大きい。

asahi.com（朝日新聞社）：中国、ダライ・ラマ側と近く再協議　進展は期待薄 - 国際
http://www.asahi.com/international/update/1029/TKY200810290305.html

＞ダライ・ラマは中国との対話路線について「中国指導部に失望した」と語っており、
進展は難しいとみられる。

その中でも毎日11月2日のこの記事によると、

ダライ・ラマ：「中国政府への信頼なくなりつつある」 - 毎日ｊｐ(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/world/asia/news/20081103k0000m030055000c.html

＞現在の中国は自由がなく、法治国家といえない。腐敗して汚れた共産主義だ。

ダライラマとしては極めて厳しい中国非難をしています。さらに、

「チベット人、監視下に」「居住地に解放軍が常駐」ダライ・ラマ、本紙と単独会見
(1/2ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/china/081102/chn0811021637000-n1.htm

＞ダライ・ラマは「いたるところに中国人民解放軍が駐留している。秘密警察要員も多数
入り込んでおり、チベット人は厳重な監視下に置かれている」としたうえで、ある地区には
１万人以上もの兵士が駐留し、チベットの伝統的な文化財や寺院などが破壊されて
いることを明らかにした。

として五輪後も中国のチベットに対する弾圧が変わっていないという状況を公けにしました。

またＡＦＰ10月27日の記事によると、

チベット対中要求、完全独立への先鋭化も　写真5枚　国際ニュース : AFPBB News
http://www.afpbb.com/article/politics/2532927/3434712

＞ダライ・ラマ（Dalai Lama）14世の側近は26日、中国政府に対する要求を、これまでの
自治権拡大から、より強度な完全独立へと先鋭化させる可能性もあることを示唆した。

このように要求レベルを更に上げていく事にも言及しています。とは言え、

＞｢唯一議論の余地がない点は、運動が今後も非暴力的であり続けることだ。
このことは全員が同意している｣と述べた。

とのことで今までの運動路線やダライラマの意向からウイグルのような暴力も含む「先鋭化」
をダライ・ラマの報道官は否定しています。ＡＦＰもこの変更方針が明示されれば亡命政府
にとって「歴史的転換」になるとしています。が一方で独立という目標はチベットが侵略された
歴史的な経過からすれば寧ろ当然であり「若い先鋭的な活動家たちは完全独立を求めて
きた」（ＡＦＰ）のであればより方向が明確化され分かりやすい主張を発し易くなるというメリット
もあるのかもしれません。

今までチベット亡命政府はダライラマの意向を尊重して対話路線を進め中国側に妥協を
図る上でも自ら独立を求めず甘んじて中国領となる代わりに自治権の拡大を求めてきた
経緯がありました。加えて中国側が全く妥協しないばかりかダライラマを指して「分離独立
主義者」とする以上、ダライラマとしてもチベット亡命政府としても交渉上もはや限界という
ところでしょうか。更にダライラマは高齢で胆石の手術もあり健康上の不安を抱え政治的
後継者不在の現在から今後の事も考慮の内に入れるなら、ある種の焦りがあるのかも
しれないとも当ブログ主は考えてみたりするのでした。

しかしながら非暴力という手段の制約から中国との交渉を考えるなら独立を訴えるというのは
ただただ「中国側が態度を硬化させる」だけであり、あまり得策とも思えません。
チベット亡命政府にはロビー活動が行えるだけの財源も無ければ交渉のテーブルに着かせる
だけの軍事力その他のカードも無いため世界各国の政府や国民に訴えかけ政治的な包囲
から中国に於いて内外からチベット独立を容認させる方向に動かしていく他ありません。
つまり中国にチベットを独立ないし自治権を拡大させた方が中国にとってもメリットがあるという
ことを示せなければ交渉という手段では自治権の拡大はおろか独立など不可能でしょう。

中国が今後も変化無く圧制国家である場合、状況は絶望的ですが世界恐慌の煽りを
受け経済的な打撃を蒙るなど内部が分裂するような変化でどさくさに紛れての独立や
段階的にでも民主化への道を辿り中国政府にも柔軟な対応が可能になった場合に限り、
自治権の拡大あるいは中国の保護国かつ同盟国としての中国軍が駐留する形での独立
といった形態も考えられるかと。いずれにせよチベットの土地がもたらす資源獲得のみならず
宗教を否定する共産主義国としての特質や縦深ある領土の必要性から拡大を余儀なく
される大陸国としての傾向からチベットなどの周辺地域に侵入し領有することを認めると、
この一帯の土地は半永久的に不安定のままになるだろうと考えます。

そもそもフリーチベットという運動は中国の侵略や虐殺状況が世界中に知れ渡り中国に
明らかな変化が訪れることを側面から支援し、独立と同等かそれ以上の権限をチベットが
国際的に認められるまで続くでしょうし、また人権思想なり人道主義なりが人類に生き続け
この状況を看過する訳にはいかない以上は続けざるを得ないという恒久的な普遍性を持ち
合わせています。日本国政府も中国政府に対して「自由と繁栄の弧」実現のためにも民主
化を促していく方策について知恵を結集し導き出していく必要があります。その具体的な
体制の基盤を形成するためにも情報機関の設立と必要な法制度の拡充を提言します。